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WEB SITE DESIGN Vol.6(技術評論社)

サイトデザインの舞台裏
もっとやさしく もっとわかりやすく ペンシルの舞台裏

WEB SITE DESIGN Vol.6(技術評論社) サイトデザインの舞台裏もっとやさしく もっとわかりやすく ペンシルの舞台裏 サイトデザインの舞台裏もっとやさしく もっとわかりやすく ペンシルの舞台裏

九州・福岡を舞台に活躍するペンシルが制作するウェブサイトは、けっして派手だったり、最先端だったりするわけではない。
しかし、そのすべてが“やさしい”。
徹底的にユーザーの立場になりきり、本当に必要とされる情報を確実に届けるペンシル。彼らが追求する“やさしさ”とはいったい何なのだろうか。




覚田義明ウェブの世界には、とかく横文字が多い。ウェブに関わっている人間はごく自然になじんでいる言葉でも、そうでない人間には何のことやらさっぱりわからない、なんてことはよくある。実は使っている側も本当の意味はなんとなくしか理解していなかったりもする。
株式会社ペンシルの覚田社長は、打ち合せやプレゼンでこういった言葉は基本的に使わない。必ず相手の目線で、相手にわかってもらえる言葉を使う。専門用語の意味を説明するくらいなら、相手がすぐに共感できる実例を使う。
「たとえば“ユーザビリティ”にしたってそうです。言葉だけが一人歩きしている感じでイヤなんです。そんな言葉を使わなくても、“やさしい”“わかりやすい”で十分じゃないかという気がして……。“わかりやすくて使いやすい”“したいことがすぐにできる”。こんなことは当然の目標だと思うんです。何百年も前から変わっていない普遍的な価値ですし、使いやすくて気持ちのよいサービスは昔からあったんですから。
たとえばスタッフに指示をするときにもそうです。ぼくは“ユーザビリティを上げる”なんて言いません。“シンプルにわかりやすく”“見ただけでもすぐに伝わるように”って言います。そっちのほうが気持ちも伝わりますから。」
シンプルに、わかりやすく、伝わりやすく。そんな覚田社長の気持ちはペンシルが制作したどのサイトにもよく表れている。
ペンシルの実績のひとつが、「マンスリーマンション福岡」(三好不動産)である。実にシンプルで、わかりやすい。しかしここまでシンプルでありながら、足りない情報が一切ない。
「こういったホームページを作るときには、“どこまで利用者の気持ちになりきれるか”がいちばんのポイントです。」



覚田義明
“読ませる”ようではダメ。
見ただけで直感的にわかるまで作り直す
「ホームページの表紙にある情報は、初めて訪れた人でも一瞬で理解できなければならない。このサイトが何のサイトで、どんなことが魅力なのか。そんなことが一瞬で、ぱっと見ただけで、視覚的にわからなければいけない。長くてもせいぜい4〜5秒のうちにわからないとダメです。」
「まず僕たちはコンセプトワークから始めます。このサイトを作る本当の目的と目標を立て、仮説を立てます。そして、実施して検証して、また、コンセプトワークを建て直します。そして、また仮説をたてて、実施して検証してと、この4つの段階をぐるぐるまわるんです。
それで、このときいちばん最初に立てた仮説は、“世の中の人はマンスリーマンションを知らない”というものでした。だからだれも泊まらない。それを広くアピールしなければならない、と。
ところが実際は違ったんです。リアルタイムマーケティングシステムでアンケートをとってみたところ、80%くらいの人はマンスリーマンションを知っていたんです。」
それよりも、「きっと汚いんでしょ」「狭いんでしょ」「システムがわからない」「価格がわからない」「まわりに泊まった人がいない」といった、知っているけど泊まらない、ユーザーの不安要素が3,000件も集まったという。
「それで、また新たな仮説を立てたわけです。“マンスリーマンションの説明はもういらない”。それよりも、不安要素を取り除くホームページを作ろう、と。
そこで、不安材料を取り除くことに集中しました。調査でわかった「狭い」「汚い」などは事実と違ったイメージなんです。表紙で、こうしたことがすぐに伝わるように変更していったんです。」
「また、第 2 段階の仮説でもうひとつ強調しようと考えたのは、“ビジネスホテルとの比較”です。それで、表紙の言葉をすべてビジネスホテルと比較した表現に変えました。」
トップページが視覚的に情報伝達を果たしている中で、とくに注目したいのは地図だ。一見ごく普通のイラストマップのようだが、ここにもトップページと同様の工夫がある。
この地図の中には、三好不動産が所有する 8 物件のマンスリーマンションがのっている。これがあれば、自分の目的地を目指すにはどの物件を選べば便利かも一目瞭然だ。ここで気になる物件のボタンをクリックすると、物件ごとのページにもさらに細かい周辺地図あり、視覚的に飛び込んでくる。
マンスリーマンションわかりやすいといえば、このサイトのタイトルもそうだろう。「マンスリーマンション福岡」というそのものずばりの名前だ。
「ユーザーは“三好不動産は知らない”けれど“マンスリーマンションは知っている”。だったら、きっとYahoo!やGoogle などの検索サイトを使うだろう。たぶんキーワードは「マンスリーマンション・福岡」だろう。そんな予測を立てるわけですね。
そして検索サイトからやってきた人の前に、この表紙が現れる。そこには知りたいことが一目でわかるように書いてある――。そんなふうに大きなが流れもそこにはあるんです。
実際、「マンスリーマンション・福岡」で検索していただくとYahoo!でもgoogleでも1 位に表示されると思います。」
サイト内のひとつのコーナーに過ぎなかったころは、問合せが月に1件しかなかった。が、この「マンスリーマンション福岡」のホームページになってからは4カ月で239 件の問合せがあり、実際の申し込みも61 件に上ったという。申し込み率は60 倍、成約率は6倍の25.5%。大成功といえるだろう。



マンスリーマンション
実はウェブは情報発信ではなく、
情報収集が得意なんです。
ユーザーの声に耳を傾けることにより、サイトは成長し続けているが、クライアントにとってはうれしい副産物もある。
「実はウェブは情報配信ではなく、情報収集が得意なんです。直接、お客さまの声を聞けるからこそ、こうした付加価値を生み出せるんです」
ホームページをつくったら、三者が喜ばなくてはいけないと覚田社長はいう。「ユーザー」「クライアント」そして「ウェブ制作会社」。三者が喜べなければそれは失敗だ。
「ユーザーに喜んでもらうには、たとえば、簡単に資料請求ができたり、手間なく申し込めたり、あるいは、お得感があったり、望んでいるものが得られたり、困っていることが解決したりする、そんなサイトをつくることです。クライアントへは、インターネットというものが、実はわかりやすくて、ビジネスにも使えるツールなんだと、伝えていくことが大切です。そして、そのためには、「ウェブ制作会社」もただのデザイン会社ではダメですよね。もっとインテリジェンスや企画力が必要です。そしてクライアントが結果を得ることにより、私たちも利益を得る。そんなふうになっていきたいですね。」



美容ウェブ
情報の領域を明確にするためのデッサン
もちろん、クライアントが要望し喜ぶものを作りたい。しかしクライアントが喜ぶと言っても、簡単に喜ぶようなものは、覚田社長にとっては「ウソ」なんだという。
「ぼくらが作ると、それはとてもシンプルだったり、また、キャッチコピーなんかもこれまでとはぜんぜん違ったりして、最初はわかってもらえなかったりします。でも、それは当たり前だと思うんです。なぜなら、ぼくらがプロとして十年以上もやってきたことを、 今日初めて説明して、それで伝わったり、理解できたらそれはウソですよ。それどころか、だれにでもできる当たり前のことしかできていないって警戒したほうがいい。
とくに今まであまりうまくいっていなかったサイトを手がけるときはそうですよね。普通に無難にこれまでどおりではダメってことなんですから。もう一度ユーザーやクライアントのことを見つめ直して、何か違う考え方をしなければいけない。だから最初は理解してもらえなくても当然なんです。でも説得して説得して熱意が伝われば、“そこまで言うならやってごらん”って任せてくれるときがある。それでやってみたら、実際にアクセス数や売り上げがぐんと増えたりする。すると「少しわかってきたよ」って言ってくれる。本当にいいものっていうのは、そんなに簡単にはわからないものですから。時間をかけて少しずつでもわかってもらえればいいんです。」



ペンシルの手がけたサイトは、どれもものすごく洗練されているとか、最先端の技術を感じさせるといった種類のものではないかもしれない。しかし、ひたすらわかりやすく、やさしく、使いやすい。先端性や洗練さを競うのではなく、まずは目的に立ち返って、そのために必要な表現手段を選ぶ。それこそがずっとデザインに必要とされてきたもののはずだ。



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WEB SITE DESIGN Vol.6
発行日:2002年11月28日発売
発行所:株式会社 技術評論社


 
 
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